「幸せ」を実感するための3つの条件

「幸せ」を実感するための3つの条件

 

アドラー心理学は、私が20年以上前から学び、私のカウンセリングやコーチングのベースになっている考え方です。今まで当サイト内で、いろいろなスキルやノウハウをお伝えしてきましたが、すべてこの心理学がベースになっています。「平本メソッド」の根幹といってもいいでしょう。

 

アドラー心理学には大きく、「思想」「理論」「技法」の3つの範囲があります。特に「思想」と「理論」を中心に、4回にわたり順を追ってお話ししていきます。初回は「思想」を見ていきましょう。

 

●編集部注:「アドラー心理学」とは?

 

「個人心理学(Individual Psychology)」の通称。ユダヤ系オーストリア人の心理学者アルフレッド・アドラー(1870〜1937)と、その後継者たちによる心理学の「思想」「理論」「技法」を指す。

 

●人が人を支配しないヨコの関係――根っこの「思想」は「共同体感覚」

 

人間の幸せの条件として、アドラー心理学では「共同体感覚」が大事だと考えています。次回以降お話しする「理論」でもこれが重要事項なのですが、実はちゃんと定義されていません。ニュアンスとしては、「一人ひとりが自分らしく、しかもお互いが協力し合える関係」という感じのものです。

 

あえて言えば、人間がヨコの関係として付き合える状態、人が人を支配しない関係とでもいいましょうか。誰かが誰かの上に立ったり下に立ったりしない関係です。大人と子供でも、女性と男性でも、国籍が違っていても、です。

 

今でこそ当たり前の考え方ですが、アドラーが生きていた19世紀後半から20世紀前半は、女性の参政権が認められていない国も多く、子供が道具のように売り買いされていた時代です。この時代背景からは、共同体感覚は非常に危険だったはずです。しかし、アドラーは心理学に共同体感覚という「思想」を持ち込みました。ここが彼のすごいところです。

 

●心理学にないはずの「思想」を、アドラーが掲げた理由

 

「思想」とは、「コレが正しくてアレは間違っている」とか、「コレが幸せでアレは幸せではない」という考え方や態度のことですが、普通、心理学で「思想」を持っているものはほとんどありません。

 

というのも、心理学は心の科学ですから、「思想」を持ってしまうと科学でなくなるからです。科学とは、原理を説明するもの。「そうやったら、あなたは不幸ですよ」「そうやらなければ、あなたは幸せですよ」とは言いません。

 

なぜ、アドラー心理学があえて科学であることをやめて、「思想」を取り入れたのでしょうか。これには理由があります。

 

後ほど具体例で説明しますが、カウンセラーがクライアント(患者)にカウンセリングするにあたって、「自分の価値観を押し付けない。つまりヨコの関係でカウンセリングしてください」としておかないと、知らず知らずのうちにカウンセラー自身の見方や考え方による色眼鏡で相手を見たり、カウンセラー自身の価値観をクライアントに押し付けて、カウンセリングがうまくいかなくなってしまうからです。クライアントに対してカウンセリングするときは、相手の価値観に基づくという『態度』もセットで行います。

 

●「私もあなたも好き」で「貢献する」と幸せに?

 

共同体感覚についてもうちょっと詳しくみていきますと、強いて言えば、次の3つの条件が満たされていると、共同体感覚があるといえます。

 

1.自己受容:自分が好きだと思えて、自分にOKを出せる状態のことです。

 

例えば、ビジネスの能力があり、大手企業で高収入をバリバリ稼いでいるのに、自分のことが好きになれずに不幸な人もいます。これを読んでいる方の中にも、「自分なんて……」と思っている人がいるかもしれません。ちょっと極端な話ですが、ホームレスなのに、自分がすごく好きでハッピーな人も、私は見てきました。ですから、能力や稼ぎ、社会的地位があるかどうかが、必ずしも幸福の条件ではありません。

 

2.他者信頼(所属感):自分だけでなく、他人にもOKを出せる状態のことです。

 

自分にOKは出せても、他人にOKが出せなかったらダメです。会社の上司や同僚、部下、家族など、「まあ、信頼できる」「妻とはよく喧嘩するけどOKだ」くらいなら大丈夫なのですが、これが、「コイツらは敵だ」とか、「上司は私をダシにして売り上げだけ上げようとしているんだ」となってしまうと、どれだけお金を稼げるとしても、すごく居づらいですね。他者信頼がないと、所属感がなくなります。

 

よく、学校にツッパリやおどける子がいますが、彼らの行動は所属感を求める行動なんですね。勉強ができない、スポーツもできない、ルックスもいいわけじゃない。でも、騒いでいると、「あいつ、うるさいな」と注目を浴びる。

 

これは、ポジティブな内容で所属感を得られなかったら、せめてネガティブなもので所属感、「自分はいるんだぞ」というものを得たいという態度です。家庭でも職場でも、所属感が得られなかったら幸せではありません。会社に行って、一応、仕事はあるんだけど……というような、いわゆる“窓際族”も幸せではありませんね。

 

私の知り合いで、自分で会社を立ち上げて、かなりの大手に成長させた人がいます。しっかりしたシステムを作ったので、彼がいなくても会社は問題なく回ります。彼がアイデアを提案すると、「社長、もういいですよ」「今はできませんから(引っ込んでいてください)」という感じ。でも、会社は回って、お金も入る。彼は、自分のことが嫌いではないけれど、そういった状態に耐え切れなくて、会社を売ってしまったんです。自分の居場所がなくなってしまったんですね。

 

3.貢献感:自分が役に立っている感覚です。

 

これがないと不幸です。例えば、こんなお年寄り。あるおばあちゃんに、自分が好きかと聞いたら、好きだと答える。お嫁さんは信頼できるかと聞いたら、信頼できると返してくる。でも、自分が何をしようとしても、「(私がやるからしなくて)いいよ」と言われて、役に立っている感覚がない。これは養護施設でもよくある話です。ヘルパーさんが、必要なことは全部やってくれます。でも、“私”は生きている気がしないのです。

 

●アドラーの「思想」(=「態度」)

 

幸せの条件は「共同体感覚」=「人が人を支配しないヨコの関係」「協力関係」である。

 

 

1. 自己受容:自分が好きだと思えて、自分にOKを出せる状態。

2. 他者信頼:自分だけでなく、他人にもOKを出せる状態。

3. 貢献感:自分が役に立っている感覚。

 

ではなぜ、アドラーはこの「思想」に基づきカウンセリングしようと考えたのでしょうか。

 

●お酒を「やめさせるよう」仕向けるのはNG――支配するタテの関係は幸せを遠ざける

 

こういう例があります。

 

ある人が、自分の父親がお酒を飲み過ぎるので、お酒をやめさせたいと思ってカウンセラーに相談したとします。この場合、アドラー心理学でも、お酒をやめさせる方法はあります。でも、お酒をやめさせることには加担しません。なぜなら、「人が他人をコントロールすることにはしない」という「思想」があるからです。というのも、アドラーはヨコの関係を重視するからです。

 

お酒を何か不快なものと結びつけたり、会話の中でお酒を不快に感じるように仕向けたりして、父親の知らないうちに酒量を減らすことはできます。しかし、それをアドラーは、人が他人をコントロールして操作する、タテの関係だと考えるわけです。

 

そして、一時は父親の酒量が減っていいかもしれないけれど、決して幸せにはならないと、アドラーは考えます。もちろん、そう考えない心理学もあって、止めさせたいといわれたら、その通りにすることもあります。

 

また、カウンセラーの意志で、やめさせる/やめさせない場合もあります。子供に勉強をさせたい、という場合も同様です。アドラー心理学でもほかの心理学でも、子供に勉強をやらせる方法はあります。でも、アドラー心理学では、子供がやるかやらないかに関係なく、子供に勉強をやらせることにはNoを言います。なぜなら、それはタテの関係だからです。

 

●「体が心配だからお酒をやめて」――支配しないヨコの関係を重視

 

では、父親の飲酒をやめさせるのも、子供に勉強をさせるのも諦めるのかといったら、そうではありません。「父親がお酒をやめるようにお願いできるヨコの関係を作る」ためのお手伝いはするんです。「子供が自ら進んで勉強したくなるように子供とコミュニケーションできる」ようにするお手伝いを、アドラー心理学はします。つまり、ヨコの関係を作ることで他人に影響を与えることに関しては大賛成なんですが、相手が知らないうちに操作することには賛成しません。

 

なぜなら、操作してその場は改善したとしても、いつかは破綻します。そして、次の方法、また次の方法と、どんどん新しい方法を使っているうちに、操作しきれなくなって揉めることがあります。また、操作している側はいいけれど、操作されている側は自分の人生の主人公ではなくなってしまいます。

 

そんな堅苦しいこと言わずに、と思うんですが、アドラーは厳格に、人が他人を操作することには一切加担しません。ただし、加担する人を否定はしません。アドラー心理学でカウンセリングする場合は、自分の価値観は一旦脇に置いておいてください。相手の価値観に基づいて考える、というだけの話です。

 

誰かが誰かを操作することはしない。その代わり、影響力を与えるようないい関係を結べるようにします。だから、父親にお酒をやめさせはしませんが、父親に「お父さんの身体が心配だから、酒量を減らしてほしいんだけど」と言える関係を作るためには全力でお手伝いします。

 

お酒のことは置いといて、どうやったら父親といい関係を結べるかに注力し、いい関係が築けた上で「お酒を減らしてほしい」とお願いして、「お前がそこまで心配してくれるなら」ということでお酒を止めてくれるほうが健全だと考えるわけです。その方が幸せだろうという価値観なんです。

 

子供の勉強でも、子供となんでも話せるようないい関係を築いた上で、「お母さんはこの勉強をしてほしい」と言ってみる。すると、子供が興味を持つ場合もあるし、「お母さんがそうでも、僕はこっちがやりたい」と、Noを言われる可能性もあります。Noを言われるかもしれないけれど、ちゃんと自分の思いを伝えられる関係になるように、アドラー心理学はお手伝いをします

 

母親に言われて勉強することの何がマズイかというと、自分で自分のことを好きになれない場合があるからです。その勉強がうまく行かなくなった時に、「いい点が取れないから、僕はダメだ。この家にいてもしょうがない」と考えて、所属感もなくなります。会社でもそうですね。上司の言うとおりに動いていることでうまくいって所属感がある場合は、いい結果が出せなくなった時に所属感はなくなります。

 

●「自分はできない存在だ」――保護によるタテの関係もマズい

 

なお、タテの関係には、相手を支配する関係に加え、相手を保護するというタテの関係もあります。これも、アドラー心理学では基本的には幸福ではないと考えます。もちろん、具合が悪い時に保護することは必要ですが、就職する会社まで親が出てきて決めるような関係はマズい。

 

この場合も、子供は自分で自分のことを好きになれません。「僕はできない存在だ」と思ってしまう。また、母親のことは信頼できるかもしれないけれど、母親以外の人は信頼できないかもしれません。また、役に立っている感覚もありません。「母親はそれで幸せだし、子供もそれでOKを出しているからいいじゃないですか」と考える人もいるかもしれませんが、アドラー心理学では、長い目で見て幸せではない、と考えます。

 

ただし、“アドラー心理学でカウンセリングする場合は”、あくまでヨコの関係をベースにします、という話ですので勘違いしないでください。タテの関係がダメという話をしてるのではありません。

 

自分を好きになって、少しでも周りを信頼できて、自分の居場所があって、少しでも役に立てている感が増えるようにする――私のカウンセリングやセミナーは、アドラー心理学をベースにして行っています。

 

●アドラー心理学がもっと分かる、4つのキーワード

 

前半期の「権力(優越)への意志」と「劣等感の補償」

 

アドラー心理学の考え方に、身体的に劣っていることなどからくる「劣等感を補償」するため、劣等感を抱く分野とは違う分野などで自分が優位に立ち、権力を手に入れようと「権力(優越)への意志」が働く、という考え方があります。

 

アドラー心理学をご存じの方なら、なぜこの2つのキーワードが私の話に出てこないのか不思議に思っていらっしゃるかもしれません。

 

アドラーは時期によって考え方が大きく変わっています。「劣等感の補償」と「権力(優越)への意志」は、器官劣等性の研究をしていた前半期の考え方です。アドラー自身は第2子で、常に兄に対して戦おうとしていたため、自分の経験からこれらの理論を展開しました。

 

しかし、後半期にはこれらについて、ほとんど言及していません。アドラーはこの時期になると「共同体感覚」や、「コモンセンス」「プライベートセンス」について語っています。

 

後半期の「コモンセンス」と「プライベートセンス」

 

「プライベートセンス」とは、自分にとって得か損かしか見えず、自分のためにしかならない感覚のこと。これに対し「コモンセンス」は、「これはみんなにとってどんな意味があるんだろう」という発想をします。これがすなわち「共同体感覚」です。「コモンセンス」は直訳すると「常識」ですが、そういう意味ではありません。

 

例えば、自分の娘の美代ちゃんが、隣の健ちゃんに泣かされて帰ってきた場合。プライベートセンスでは、ウチにとってどんな意味があるんだろうと考え、「ウチの子がやられた」とか「体面を汚された」というような発想しかできません。一方、「娘の美代と私と、向こうの親と健ちゃん、この4者にとってどういう意味があるんだろう」と発想するのがコモンセンスです。それがすなわち共同体感覚があるということで、後半期のアドラーの中心テーマになっているのです。

 

引用 Biz.ID

 

うーん。むずかしいー

 

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